設備設計に資格は必要?おすすめの資格や未経験からなる手順も紹介
建設・不動産 転職豆知識
2024.11.14
設備設計とは、人々の快適な生活を支えるための建物のインフラを設計する重要な仕事です。仕事内容は空調・電気・水道など多岐にわたっており、各分野の専門知識が求められます。今回は、設備設計のおすすめの資格、未経験から設備設計士になる手順などを解説していきます。
設備設計の仕事とは?
設備設計の業務を担う者を、一般的に「設備設計士」と呼びます。設備設計とは、建物の利便性と快適性を向上させるために、空調・給排水・電気などの設備を、計画・設計する仕事です。
例えば、商業施設・オフィスビル・マンションなど、設備設計の仕事はさまざまな場所で行われています。このように手掛ける建築物の種類は多岐にわたるため、設備設計士は各設備工事や設備機器の知識だけではなく、建築的な知識も求められます。
設備設計の仕事に必要な資格は?
設備設計の仕事自体は、資格が無ければできない訳ではありません。しかし、資格を持っていれば受けられる仕事の幅が広がり、転職活動や年収アップにも有利に働く可能性があるでしょう。さらに、一定規模以上の建築物の設備設計を手がける場合や、設備設計が建築プロジェクトに関連している場合、次の資格が必要となります。
設備設計一級建築士
設備設計一級建築士とは、設備設計に関するスペシャリストとしての専門知識や経験を証明するための資格です。一級建築士として5年以上の設備設計の実務経験が必要なうえ難易度の高い資格であるため、キャリアアップや転職をするうえで非常に価値ある資格と言えるでしょう。
この資格は、2005年に起きた耐震偽装問題を受けて、「建築士法」が改正されたことによって生まれました。「3階以上の高さ」かつ「床面積が5,000平方メートル以上」の規模の建物に関する設備設計をする際には、設備設計一級建築士の資格を持っている人が自身で設計、もしくは設備関係規定の適合性があるかの確認を義務付けられています。仮に、設備設計一級建築士を介さないで設備設計がなされ、建築確認申請が行われた場合、その申請書は受理できません。
設備設計一級建築士資格の取得方法
取得には3つのステップを踏む必要があります。
1つ目は「一級建築士として設備設計の業務経験を5年以上」積むことです。5年の設備設計の業務経験には、建築設備(工事監理業務や審査業務)や、建築確認前におこなう消防同意業務なども含まれています。ただし、2013年より建築設備の設計および工事監理の補助作業については、業務経験として含まれなくなったので注意が必要です。
2つ目は「3日間開催される講習会を受講する」ことです。一級建築士としての設備設計の業務経験を5年以上積んだ後に所定の申請をしておくと、講習会への参加資格を得られます。講習会での講義では、建築設備における設計技術や建築設備関係法令について学びます。
3つ目は「修了考査に合格する」ことです。この修了考査は、3日間の講習会の後に開催されます。修了考査では、設備設計に関わる各種法適合確認や設計製図などについての知識を問われるでしょう。
なお、設備設計一級建築士として実際に活動するには、「士証交付申請」をして、設備設計一級建築証の交付を受けておく必要があります。申請先は、建築技術教育普及センター(本部および支部)で、交付申請後2カ月ほどで証明書が発行されるでしょう。ただし、講習会修了後から1年が経過すると、交付が受けられなくなるので注意が必要です。
建築士(一級・二級・木造)
設備設計が、建築物の設計もしくは工事監理を伴う場合は、建築士の免許が必要です。建築士は、建築設計・建築工事の計画・工事監理など、建築に携わる専門家としての資格です。建築士にはさまざまな分類が存在しており、設備設計では「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」の資格が有用とされています。
「一級建築士」は、高度な建築や広範囲で複雑な建築関連業務に携わることができる資格です。高度な専門的知識と実務経験が求められるため、取得の難易度が高い資格とされています。
「二級建築士」は、一般的な住宅や小規模な商業施設など、比較的規模が小さな建築物の設計や工事監理をするための資格です。一級建築士へのステップアップのために取得する方も少なくありません。
「木造建築士」は木造建築に特化した建築士の資格です。資格取得によって、「2階以下」かつ「延べ面積が300平方メートル以内の木造建築物」について、設計や監理ができるようになります。
設備設計士におすすめの資格
設備設計の仕事ではさまざまな知識やスキルが用いられます。そのため、能力を証明する資格を有していれば、転職などで設備設計の仕事が見つけやすくなるでしょう。設備設計の仕事をするにあたって、おすすめの資格を以下に紹介します。
設備士資格検定
「設備士資格検定」とは、空気調和(暖冷房や換気設備)および給排水衛生設備の設備についての知識や技術を認定する資格です。ただし、この資格を取得しなければ、空調設備や給排水設備の設置ができないわけではありません。試験は年1回実施されており、試験に合格すると「空気調和・衛生工学会設備士(工学会設備士)」と認定されます。
受験にあたっては、大学の理科系課程を修了していない者は、建築設計についての実務経験が必要になります。試験に合格することで、空気調和・衛生工学会設備士(工学会設備士)の称号が得られます。
建築設備士
「建築設備士」とは建築士法に基づく国家資格です。建築士の求めに対し、設備設計・工事監理・工事施工に関するアドバイスができるようになる資格です。設備設計に直接関わる資格の1つですが、設備設計業務を請け負うためにこの資格が必須というわけではありません。
試験は1次試験と2次試験に分かれており、受験資格は大学指定学科卒業後に実務経験が2年以上あることです。短期大学・高等専門学校指定学科卒業の場合は4年、高等学校卒業なら6年の実務経験が必要になります。ちなみに、建築設備士を取得した者は、建築士(一級・二級・木造)の受験資格が実務経験なしで与えられるため、キャリアアップの第一歩として取得を目指すのも良いでしょう。
建築CAD検定試験
設備設計の仕事では、設計士としての力量も試されます。設計士の仕事では、AutoCAD/Vectorworks/CADWe’ll TfasといったCAD(Computer-Aided Design)ソフトを使用することが一般的です。CADのスキルを証明する資格試験や検定に合格することで、その能力を示せるでしょう。その中でも「建築CAD検定試験」は、設備設計の仕事におすすめです。
建築CAD検定試験とは、CADを用いておこなう建築図面の作図についての技術と知識を認定する民間資格です。この資格を所持しておけば、CADの実技能力があることが証明できるので、設備設計の仕事で大いに役立つでしょう。また、建築設計の知識自体も、設備設計にとって非常に有益です。
この建築CAD検定試験は、4級から準1級までの等級があり、4級は高校における団体受験でのみ受験可能となっています。そのため、試験を受ける場合は、3級から受けるのが一般的です。2級と3級は年に2回、毎年4月と10月に試験があります。準1級は年に1回のみで、10月に試験があります。受験資格は特に定められてないため、誰にでも受験のチャンスがあるでしょう。
その他のおすすめ資格
設備設計の業務では、設置する設備に特化している資格も役に立ちます。例えば、電気設備に特化した「電気工事士」、機械設備に特化した「機械設備士」などは、設備設計の仕事におすすめの資格です。
CADに関する資格では「CAD利用技術者試験(2次元・3次元)」「CAD実務キャリア認定制度」「3次元設計能力検定試験」「CADデザインマスター」などを取得するのも良いでしょう。さらに、特定のCADソフトの使用スキルを認定する資格の取得もおすすめです。例えば、「オートデスク認定資格プログラム」と「Vectorworks操作技能認定試験」は、AutoCADとVectorworksのスキルをそれぞれ認定している資格です。どちらも設備設計において使用率が高いソフトウェアなので、仕事の能力を証明することに役立つでしょう。
実務未経験から目指せる設備設計士の仕事の見つけ方
実務未経験者が設備設計の仕事に就くためには、どのようにすればよいのでしょうか。効率よく設備設計の仕事を見つけるには、業界専門の求人サイトをチェックすることがおすすめです。一方で実務経験者や学科卒者の採用に前向きな企業が多く、実務未経験者や非学科卒者の就職はハードルが高いことも頭に入れておきましょう。以下では求人サイトを用いた設備設計の仕事の見つけ方を紹介します。
希望条件を洗い出す
求人サイトで検索を始める前に、まず「自分の希望条件」を決めます。一般的に求人サイトで検索すると、膨大な数の求人情報が提示されるため、その中から自分にぴったりの職場を見つけだすのは困難です。そこで、あらかじめ希望条件を設定し、検索結果を絞り込む必要があります。
この時点で自分の希望条件を洗い出し、勤務場所・勤務時間・休日数・給与の額面・福利厚生の内容などを明確に絞り込むと良いでしょう。また、すべての条件を満たす勤務先は見つからないことが多いので、希望条件には優先順位を付けておくことも大切です。
ワード検索で情報を絞り込む
希望条件が決まったら、キーワード検索で求人を探します。キーワード検索では求人情報を横断的に集められるでしょう。検索する際は「設備設計」だけでなはく、「設備設置」「建築設計」「設計事務所」など、関連しそうなワードまで広く検索することをおすすめします。
また、実務未経験でも積極的に採用したい企業や育成制度を整えている企業は、「未経験可」といったキーワードが書かれていることが多いでしょう。そのような求人は企業側にも採用の意欲があるため、実務未経験でも採用される確率が高いかもしれません。
検索結果を希望条件で絞り込み、応募先の候補が決まったら、候補となった企業の情報を収集します。情報収集には企業ホームページや口コミなどを利用するとよいでしょう。多方面からの情報収集によって、応募先の候補となる企業を深く理解できるはずです。
情報の絞り込みで迷ったり、忙しくて時間がない場合は、業界専門の転職エージェントに相談するのも良いでしょう。聞きにくい待遇面を企業に確認したり、育成制度が整っているような条件のマッチする求人情報を紹介してもらえる可能性もあるので、効率的に転職活動を行うことができます。
設備設計は資格が必要なことも!しかし実務未経験者でもチャレンジは可能
設備設計の仕事は、「建築士」や「設備設計一級建築士」の資格が必要な場合があり、未経験者には難しいと考えられがちです。しかし、高齢化による人手不足や大規模な開発によって、設備設計士の需要は非常に高まっています。そのため、実務未経験者でも設備設計の仕事をするチャンスはあります。
設備設計に興味がある方は、おすすめの資格を取得して転職にチャレンジしてみましょう。また、施工管理などの仕事をしながら、専門学校等で学科卒業資格を取得した方が近道の事も多いので、未経験からの転職に不安がある人は、転職エージェントに相談をするとアドバイスを得られるのでおすすめです。