大手設計事務所ランキング!建築・組織設計事務所の強みと特徴を比較
CAD・設計職転職豆知識
2025.09.26

日本の建築業界を牽引する組織設計事務所について、売上高を基にした最新ランキングを紹介します。
この記事では、ランキング上位の各社の強みや実績を比較し、それぞれの特徴を解説します。
就職や転職を考える方から、建築プロジェクトの発注を検討している企業の担当者まで、自身の目的に合った設計事務所を見つけるための情報を提供します。
まずは基本から!設計事務所の種類とゼネコンとの違い
建築プロジェクトを検討する上で、設計事務所の種類やゼネコンとの違いを理解することは重要です。
設計事務所は、大きく分けて「組織設計事務所」と「アトリエ系設計事務所」に分類され、それぞれに特色があります。
また、設計を専門とする事務所と、設計から施工まで一貫して請け負うゼネコンでは、プロジェクトにおける役割が異なります。
ここでは、これらの基本的な違いについて解説します。
組織設計事務所とアトリエ系設計事務所の特色
設計事務所は、その規模や運営形態によって「組織設計事務所」と「アトリエ系設計事務所」に大別されます。
組織設計事務所は、多数の建築士や技術者を擁し、意匠、構造、設備などの各分野で専門家が分業してプロジェクトを進めるのが特徴です。
そのため、大規模で複雑な建築物の設計を得意とし、安定した品質を提供できます。
一方、アトリエ系設計事務所は、建築家個人の作家性やデザイン性を強く反映した建築を手掛けることが多く、小規模なチームで運営されるのが一般的です。
独自の哲学やコンセプトに基づいた、意匠性の高い建築物を求める場合に適しています。
ゼネコンの設計部と設計事務所の役割分担
建築プロジェクトにおいて、設計を担う主体は設計事務所だけではありません。
ゼネコンも社内に設計部を持ち、設計から施工までを一貫して請け負う「設計施工」方式でプロジェクトを進めることがあります。
設計事務所は、発注者の代理人として、設計および工事監理を行う独立した立場です。
これにより、施工品質を客観的にチェックし、発注者の利益を守る役割を果たします。
一方、ゼネコンの設計部は施工と一体で動くため、コストや工期の面で効率的な計画を立てやすい利点があります。
どちらの形態を選ぶかは、プロジェクトの特性や発注者が何を重視するかによって変わります。
【最新】売上高で見る大手設計事務所ランキングTOP10
ここでは、各社の公開情報を基にした売上高による大手設計事務所の最新ランキングを紹介します。
売上高は、企業の事業規模や手掛けるプロジェクトの大きさ、そして社会的な信頼性を測る上での重要な指標の一つです。
このランキングを通じて、業界をリードする大手企業の勢力図を把握し、各社の立ち位置を理解することができます。
就職・転職活動における企業研究や、プロジェクトの発注先を選定する際の客観的なデータとして活用ください。
ランキング上位!大手設計事務所10社の強みと実績を比較
売上高ランキングで上位に位置する大手企業は、それぞれに独自の強みと豊富な実績を持っています。
単に規模が大きいだけでなく、特定の建築分野で高い専門性を発揮したり、先進的な技術を取り入れたりと、各社が独自の色を打ち出しています。
ここでは、ランキング上位の設計事務所10社を取り上げ、それぞれの得意分野、代表的なプロジェクト、企業風土などを具体的に比較しながら解説します。
日建設計:国内外で大規模プロジェクトを手掛ける業界のリーダー
株式会社日建設計は、長年にわたり業界のトップを走り続ける日本最大の組織設計事務所です。
国内だけでなく、海外においても数多くの大規模プロジェクトを手掛けており、その実績は多岐にわたります。
代表的な実績には、東京スカイツリーや東京ミッドタウン、さいたまスーパーアリーナなどがあり、都市のランドマークとなる建築物を数多く生み出してきました。
意匠、構造、設備、都市計画、コンサルティングなど、建築に関わるあらゆる専門分野のプロフェッショナルが在籍しており、その総合力と高い技術力で複雑な要件に応えます。
グローバルなネットワークも強みであり、世界各地で現地の文化や環境に配慮した設計活動を展開しています。
三菱地所設計:都市開発で培った豊富なノウハウが強み
株式会社三菱地所設計は、三菱地所グループの中核を担う組織設計事務所です。
特に、東京の丸の内エリアにおける大規模な都市開発で培われた豊富なノウハウが大きな強みとなっています。
オフィスビルや商業施設の設計において卓越した実績を持ち、丸の内ビルディングやJPタワーなど、日本のビジネスシーンを象徴する数々の建築物を手掛けてきました。
グループの総合力を活かし、企画段階から設計、運営までを見据えた長期的な視点でのまちづくりに関わることが多いのも特徴です。
歴史的建造物の保存・再生にも注力しており、伝統と革新を融合させたデザインで高い評価を得ています。
日本設計:官公庁案件や再開発で高い実績を誇る
株式会社日本設計は、官公庁案件や大規模な都市再開発プロジェクトで実績を持つ組織設計事務所です。公共建築物の設計に定評があり、庁舎、文化施設、教育施設、医療施設など、社会の基盤となる多くの施設を手掛けてきました。代表的なプロジェクトとしては、日本橋室町東地区開発などが挙げられます。日本設計は、日本橋室町東地区開発計画において、統括設計・実施設計・工事監理を担当しています。環境配慮型建築の分野でも先進的な取り組みを行っており、サステナビリティを重視した設計思想が特徴です。社会性や公共性の高いプロジェクトにおける豊富な経験と信頼性から、官民問わず幅広いクライアントから支持されています。
NTTファシリティーズ:情報通信技術を融合させた建築が特徴
株式会社NTTファシリティーズは、NTTグループが持つ情報通信技術(ICT)とエネルギー技術を建築に融合させている点が最大の特徴です。
特に、高い信頼性とセキュリティが求められるデータセンターや通信ビルの設計においては、国内トップクラスの実績を誇ります。
その技術力は、一般的なオフィスビルや商業施設、医療施設などの設計にも応用されており、エネルギー効率の高いスマートビルの構築を得意としています。
建物のライフサイクル全般にわたるマネジメントやコンサルティングも手掛けており、設計から運用、維持管理まで一貫したソリューションを提供できる体制が強みです。
東京に本社を構え、全国に拠点を展開しています。
梓設計:空港やスポーツ関連施設の設計で高い専門性を持つ
株式会社梓設計は、特定の建築分野において非常に高い専門性を持つことで知られています。
特に空港関連施設の設計では国内随一の実績を誇り、東京国際空港(羽田空港)の旅客ターミナルビルをはじめ、国内外の数多くの空港プロジェクトに携わってきました。
また、スポーツ施設の設計も得意分野であり、新国立競技場の設計にもJVの一員として参画しています。
スタジアムやアリーナといった大規模な建築物において、複雑な機能要件を満たしつつ、多くの人々を安全かつ円滑に誘導する動線計画に長けています。
このような特殊なノウハウと経験が、同社の競争力の源泉となっています。
JR東日本建築設計:駅ビルなど鉄道関連施設の設計を得意とする
株式会社JR東日本建築設計は、その名の通りJR東日本グループの一員として、鉄道関連施設の設計を主軸に事業を展開しています。
東京駅や新宿駅といった巨大ターミナル駅の改良プロジェクトや、駅に併設される駅ビル、ホテル、商業施設などの設計を数多く手掛けているのが最大の特徴です。
鉄道という公共交通インフラを核としたまちづくりを得意とし、利便性と賑わいを両立させる空間デザインに定評があります。
東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事や、JR新宿ミライナタワーの設計など、歴史的価値のある建築から最新鋭の複合施設まで、幅広いプロジェクトで実績を重ねています。
山下設計:医療福祉施設からオフィスまで幅広い分野で活躍
株式会社山下設計は、特定の分野に偏らず、幅広い用途の建築設計を手掛ける総合力が強みの組織設計事務所です。
中でも、医療・福祉施設の設計においては国内有数の実績とノウハウを持ち、利用者やスタッフの動線を考慮した機能的で使いやすい空間づくりで高い評価を得ています。
病院や介護施設だけでなく、オフィスビル、庁舎、教育・文化施設、再開発プロジェクトなど、手掛ける分野は多岐にわたります。
奇をてらわない堅実なデザインと、クライアントの要望に丁寧に応える姿勢が特徴で、長年にわたり安定した実績を積み重ねています。
東京本社を中心に、全国で事業を展開しています。
佐藤総合計画:都市計画から建築まで総合的なコンサルティングを提供
株式会社佐藤総合計画は、個別の建築設計にとどまらず、都市計画やまちづくりといった、より大きなスケールのコンサルティングから手掛けることを得意とする組織設計事務所です。プロジェクトの初期段階から参画し、事業計画の策定から設計、監理までを一貫してサポートできる総合力が強みです。特に、美術館、博物館、劇場といった文化施設の設計で豊富な実績を持ち、その土地の歴史や文化を反映した空間デザインで知られています。同社は、数多くの公共建築を手掛けており、例えば、東大阪市文化創造館や、ミライon 長崎県立長崎図書館及び大村市立図書館、大村市歴史資料館などの設計に携わっています。福岡を含む全国の主要都市に拠点を置き、地域に根差した活動も行っています。
安井建築設計事務所:100年の歴史を持つ伝統と革新のデザイン
株式会社安井建築設計事務所は、まもなく創業100年を迎える歴史と伝統を誇る組織設計事務所です。
大阪に本社を構え、関西圏を地盤に発展してきましたが、現在では全国で多様なプロジェクトを手掛けています。
長い歴史の中で培われた確かな技術力とクライアントとの信頼関係が最大の強みです。
オフィスビルや生産施設、教育研究施設、商業施設など、特定の分野に偏ることなく幅広い用途の建築に対応できる総合力を持っています。
伝統を重んじながらも、常に新しい技術やデザインを取り入れる革新的な姿勢を併せ持ち、時代が変わっても色褪せない普遍的な価値を持つ建築を目指しています。
久米設計:ホテルや商業施設など多様な建築分野で実績多数
株式会社久米設計は、ホテルや商業施設、オフィスビルなど、民間企業のプロジェクトを中心に数多くの実績を持つ組織設計事務所です。
特に、ホスピタリティが求められるホテルやリゾート施設の設計を得意としており、利用者の心に残る上質な空間づくりで高い評価を受けています。
デザイン性の高さはもちろんのこと、クライアントの事業性を考慮した計画提案力も強みの一つです。
近年では虎ノ門ヒルズの設計に共同で参画するなど、大規模な都市開発プロジェクトでも存在感を発揮しています。
また、海外にも積極的に展開しており、アジアを中心にグローバルな活動を行っています。
京都をはじめとする観光都市での実績も豊富です。
プロジェクト成功の鍵!大手設計事務所を選ぶ4つのポイント
数ある大手企業の中から自社のプロジェクトに最適な組織設計事務所を選ぶことは、プロジェクト成功のための重要な第一歩です。
各社が持つ強みや実績は多種多様であり、単に知名度や規模だけで選ぶと、期待通りの成果が得られない可能性もあります。
ここでは、発注者の視点から、自社の目的や建築物の特性に合ったパートナーを見つけるための4つの具体的なポイントを解説します。
これらの視点を持って比較検討することで、より良い選択が可能になります。
Point1:建築したい建物の用途や規模で得意分野を確認する
設計事務所を選ぶ上で最も基本的なポイントは、これから建築したい建物の用途や規模と、事務所の得意分野が合致しているかを確認することです。
大手設計事務所は総合的に様々な建築物を手掛けていますが、中でも特に実績が豊富な分野が存在します。
例えば、空港施設に強い事務所、医療福祉施設を数多く手掛けてきた事務所など、各社に特色があります。
事務所のウェブサイトなどで過去の実績(ポートフォリオ)を詳細に確認し、自社のプロジェクトと類似した実績が豊富かどうかを確かめましょう。
なお、個人住宅のような比較的小規模な建築は、大手組織設計事務所では取り扱わないケースが多い点には留意が必要です。
Point2:過去の建築実績からデザインの方向性を見極める
機能性やコストだけでなく、建築物のデザインは企業のブランドイメージや利用者の満足度に直結する重要な要素です。
それぞれの設計事務所には、デザインに対する独自の哲学や傾向があります。
過去の実績を調べる際には、建物の外観や内装の写真だけでなく、設計コンセプトやどのような点にこだわってデザインされたのかも確認しましょう。
先進的でシャープなデザインを得意とするのか、周辺環境との調和を重視した落ち着いたデザインが多いのかなど、その事務所が手掛けた建築物全体に共通する方向性を見極めることが重要です。
自社が求めるイメージと合致するデザインを提案してくれそうな事務所を選びます。
Point3:担当者との相性やコミュニケーションの円滑さを重視する
建築プロジェクトは、構想から完成まで数年にわたる長期間の共同作業です。
そのため、設計事務所の担当者との相性やコミュニケーションの円滑さは、プロジェクトをスムーズに進める上で非常に重要な要素となります。
いくら実績豊富な大手企業であっても、担当者との意思疎通がうまくいかなければ、要望が正確に伝わらなかったり、問題発生時の対応が遅れたりする可能性があります。
初期段階のヒアリングやプレゼンテーションの場で、こちらの要望を深く理解しようとする姿勢があるか、専門用語を分かりやすく説明してくれるか、議論がしやすい雰囲気か、といった点を確認しましょう。
信頼できるパートナーとして、共にプロジェクトを進めていける相手かを見極める視点が必要です。
Point4:設計から工事監理まで一貫したサポート体制かチェックする
設計事務所の業務は、設計図を描くだけで終わりではありません。
設計図通りに工事が進められているかを確認する「工事監理」も、発注者の代理人として行う重要な役割です。
設計者が工事監理まで一貫して担当することで、設計の意図が施工者に正確に伝わり、建築物の品質を確保しやすくなります。
大手組織設計事務所であれば、設計から工事監理まで一貫して対応できる体制が整っているのが一般的ですが、契約前にサポート範囲を明確に確認しておくことが重要です。
特に複雑な設計や特殊な工法を採用する場合には、監理業務における経験や実績が豊富かどうかも確認すべきポイントとなります。
まとめ
日本の建築業界を代表する大手設計事務所は、それぞれが長い歴史の中で培ってきた独自の強みと専門性を持っています。
売上高ランキングは事業規模を示す一つの指標ですが、事務所選びの際は、それだけでなく各社の得意分野や過去の実績、デザインの方向性などを多角的に比較検討することが求められます。
また、建築プロジェクトは長期間にわたるため、担当者との円滑なコミュニケーションや、設計から工事監理までの一貫したサポート体制も重要な選定基準です。
本記事で紹介した情報を参考に、自社の建築プロジェクトの目的と特性に最も合致するパートナーを見つけてください。

