土木設計職の年収はどれくらい?年収を上げるコツも紹介
建設・不動産 転職豆知識
2024.11.14
インフラ改修需要の高まりなどから、土木設計の仕事に興味を持った人もいるでしょう。そこで気になるのは、土木設計士の平均年収です。この記事では、土木設計の概要を簡単に説明し、統計からわかる平均年収の額やキャリアによる年収の違い、年収を上げるコツなどを紹介します。
土木設計とは
土木設計は、国の基幹産業のひとつである土木関連の設計・施工をする職種のことです。「土木」と聞いて、道路工事や下水工事を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、実際はもっと幅広い建築物や設備に関わっており、橋、トンネル、ダム、堤防、港湾施設、空港、上水道など、社会生活に欠かせないインフラを作り出しています。
土木の意味
「土木」という言葉は、文字通り「土」や「木」のことを意味しています。つまり、土木設計とは、「土石」や「木材」などを使用する工事(設計・施工)に、専門的な知識と技術を投入して行われる仕事のことを指します。
土木設計の仕事の詳細
土木設計の職種分類で仕事をする人を、「土木設計職」(土木設計技術者)と呼びます。土木設計職の仕事は、主に調査・設計・施工などです。なかでも設計は、大きく分類して「概略設計」「詳細設計」の2つがあります。
「概略設計」とは、土木工事前の各種調査をした後に、設計の枠組みを大まかに決めることです。工事の可否判断はもちろんのこと、建物の形状、配置、構造などを決定します。通常、土木工事は分野ごとに細かく分担して全体を作り上げる分業体制になっていることがほとんどです。そのため、全ての分野が1つの土木建築物や施設を作り出すために不可欠な設計の職務といえます。
もう一つの「詳細設計」とは、「概略設計」から設計内容を突き詰めて、詳細を固めることです。サイズなどを微調整しながら、数値に基づいて図面の制作や仕様書の用意をします。例えば、図面を作るときに企業によってはAIなどの技術を活用したCADソフトを使用するケースもあります。その上で、部位の寸法や材料の選定、設備の配置、配管や配線の詳細な計画を立てるのです。
土木設計と建築設計の違い
土木設計と似た仕事に「建築設計」があります。しかし、土木設計は建築設計とは明確に区別されています。建築設計とは、住宅やビルなどの「人が住む建物」を対象にしており、人の住みやすさやデザインなども重視されます。
一方、土木設計では、必ずしも人の住む場所ではなく、道路や橋、ダムなどの公共施設やインフラを設計することが多いのです。とはいえ、土木設計と建築設計には共通した部分もあり、技術的に同じものが使われているケースも少なくありません。そのため、公共施設の中には、基礎設計がされた上で、土木と建築それぞれで分担しているものもあるのです。実際、設計事務所やゼネコン、工務店など、同じ会社に土木と建築の異なる職種の人が集まることもよくあります。
土木設計職の平均年収
土木設計職の平均年収は、約573万円と比較的高めになっています。さらに、経験が豊富な方であれば1000万円以上ということも少なくありません。なお、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」では、集計時に職種名を「土木設計職」ではなく「土木技術者」(「設計士」が付かない名称)で記載しています。これは、管理職や別職種を含まず、1つの職種のみでカテゴリを小分類していることが背景にあります。
つまり、「土木技術者」だけを見ると統計調査の結果から、およそ530万円前後が年収の相場となります。会社の規模によって、平均は500万円~560万円という結果が以下の計算式から出ています。
【年収の平均額を計算した式】
- 企業規模計(10人以上):(月給346,900円×12ヶ月)+賞与832,200円=約500万円
- 企業規模計(1,000人以上):(月給386,600円×12ヶ月)+賞与959,900円=約560万円
以上が、「土木技術者」よりも「土木設計職」が高い理由と平均年収の実態です。さらに残業代が入ると、月20h平均でも年間約40~60万円となり、普通のサラリーマンの平均年収約420~440万円に比べて、土木設計職は約200万円も年収が高い結果になっていることが分かるでしょう。
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
賃金構造基本統計調査
土木設計職のキャリアでの年収の違い
土木設計職の業界には、土木関連の管理・監督者や多くの従事者がおり、キャリアの違いで年収の差が生まれます。しかも、土木設計職には、設計業務だけに従事する以外にも、コンサルティングや施工管理・監督のように、1つ上のステージがあるため、業務内容にも幅があるのです。
年齢が上がると年収も上がる傾向
実際のところ、年収は現場で管理者の下で働くよりも、管理・監督者として働くほうが高くなります。そのため、土木設計士に求められるキャリアを基にした業務内容の違いが年収にあらわれます。
しかし、監督・管理を担う「主任技術者」「監理技術者」は、1級・2級土木施工管理技士の資格取得や実務経験を経る必要があるなど、キャリアを積むために必要な段階があります。全体傾向としては、年齢が高いほど年収が上がりやすい職種というとこです。
また、土木設計職は専門的な工学の知識も必要となるため、実務レベルまで学んで身につけている人とそうでない人では、資格取得の難易度も変わりますし、会社内での役割も違いが出てきます。
会社の規模や独立によっても年収に差がある
もちろん、キャリアを積んで年齢を重ねても、年収の差が大きくないところもあります。会社の人数規模が小さければ当然年収は上がりにくいですし、能力やキャリアだけが年収の差を決めるわけではありません。
ただし、キャリアを積み上げて独立した場合は、雇用される側の労働者より年収が高くなることでしょう。独立には多くのキャリアを積む必要があるため、明確な年収差としてあらわれやすいのです。
土木設計職が年収を上げるコツ
では、土木設計職が年収を上げるためには、何が必要でしょうか。年収を上げるためのコツとして、以下の2つが挙げられます。
積極的にキャリアを積む
まずは、現状を把握して、自分に必要な資格や仕事経験を知ることです。例えば、土木設計職には「土木施工管理技士」や「技術士」のような国家資格があり、他にも「土木設計技士」や「RCCM」(コンサルタント資格)のような民間資格も多数あります。
コンサルティング方面で活躍してキャリアを積みたいなら、建設分野の「技術士」「RCCM」を取得すると良いでしょう。管理・監督者を目指して、収入を引き上げたいなら、さまざまな実務経験を経た後、国家資格を取得して管理・監督者の技能と資格を身につけることが収入を上げるコツです。
職場や仕事内容を変える
土木設計職の業務は、調整や予算の確認などの業務が多く発生します。その中で、年収を引き上げるキャリアの選択につなげるためには、職場や仕事の内容を変えることも一つの選択肢です。
実際に、大きな規模の会社ほど年収は高くなる傾向にあります。例えば、小さな設計事務所で経験を積んだ後、大きな会社に転職するのも良いでしょう。転職する際は、前職よりもより良い条件を交渉してもらえる転職エージェントを利用すると、待遇面のミスマッチを少なくできるでしょう。
また、職場を変えずに、土木設計職として仕事の内容を変えることも有効な方法です。年収を上げるためにはさまざまな経験を経て、可能な業務の幅を広げることが重要になります。特に、単純な業務が多くてキャリアにプラスになる要素が少ないときは、全く方向性の違う業務の担当者を目指すのもありでしょう。それも難しければ、転職先として異なる業務経験が積める会社を探すのがおすすめです。
土木設計職の年収を上げるためにスキルアップや転職をしよう
今回は、土木設計の概要と年収の統計について解説しました。土木設計は建築設計と混同しやすいですが、明確に区別される職種です。そして、土木設計職の年収はサラリーマンの平均より高い傾向にあります。
さらに年収を上げるためには資格取得などで積極的にキャリアを積み、エージェントを活用した転職や独立なども将来的に目指すことがおすすめです。