不動産で独立開業する流れ|成功の秘訣と年収、宅建の必要性
営業職業界あれこれ転職豆知識
2025.09.26

不動産業界で独立開業するには、具体的な流れを把握し、入念な準備を進めることが成功の鍵となります。
独立するためには、事業計画の策定から資金調達、事務所の確保、そして宅地建物取引業免許の取得といった数多くのステップを踏む必要があります。
この記事では、独立開業までの具体的な流れや、多くの人が気になる年収の実態、成功に不可欠な宅建資格の必要性について、網羅的に解説します。
これから開業を目指す方が知っておくべき情報をまとめました。
不動産での独立は儲かる?気になる年収の実態
不動産業での独立は「儲かる」というイメージがありますが、その実態は個人の力量に大きく左右されます。
会社員の平均年収と比較して、独立開業した場合は1,000万円以上の高収入を得る人も多い一方で、売上が安定せず廃業に至るケースも少なくありません。
収入は仲介手数料などの売上から経費を差し引いた額となり、成果が直接収入に反映されるのが特徴です。
成功すれば青天井の収入が期待できますが、そのためには継続的に契約を獲得する営業力と経営手腕が求められます。
不動産業で独立する前に知っておきたいメリット
不動産業で独立するメリットは、高い収益性が挙げられます。
自身の成果が直接収入に結びつくため、会社員時代以上の高年収を目指すことが可能です。
また、不動産業には定年がないため、健康であれば年齢に関わらず長く働き続けることができます。
自分の裁量で働き方を決められる自由度の高さも魅力であり、ワークライフバランスを重視したい人にも適しています。
さらに、地域社会に貢献できるやりがいを感じられる点も、独立したいと考える動機の一つになります。
不動産業で独立する際に覚悟すべきデメリット
不動産業での独立には、メリットだけでなくデメリットも存在します。
最大のデメリットは収入が不安定になるリスクです。
会社の固定給とは異なり、契約が取れなければ収入はゼロになる可能性もあります。
また、営業活動だけでなく、経理や総務、法務といった全ての業務を一人でこなさなければならず、その業務量の多さから失敗するケースは少なくありません。
集客から契約、アフターフォローまで全て自己責任となるため、事業を軌道に乗せるのは難しいことです。
不動産で独立開業するための7ステップ
不動産業で独立開業するには、計画的な準備が不可欠です。その手順は複数のステップに分けられ、情報源によって4ステップから8ステップと幅があります。例えば、6つのステップで解説している情報源や、8つのステップで解説している情報源も存在します。一般的には、事業の基本方針の決定、資金の準備から始まります。
具体的には、宅地建物取引士の資格取得や事務所の確保を進め、その後、法人設立や開業手続きを行います。最終的に宅地建物取引業免許を取得し、集客の仕組みを整えて営業を開始するまでの一連の流れを把握することが重要です。全体のプロセスには数ヶ月の期間を要する場合があるため、各ステップを着実に進める必要があります。
ステップ1:事業の基本方針(経営形態・業種)を決める
独立開業の最初のステップは、どのような事業を行うかという基本方針を固めることです。
不動産業には、売買仲介、賃貸仲介、物件管理、不動産開発など様々な種類があります。
例えば、比較的少ない資金で始められる賃貸仲介や、安定した収益が見込める賃貸業、高額な取引を扱う投資用不動産仲介など、自身の経験やスキル、資金力に応じて業種を選択します。
特に不動産仲介は在庫を抱えるリスクが低いため、独立の第一歩として選ばれやすい傾向にあります。
同時に、個人事業主として始めるか、法人を設立するかの経営形態も決定します。
ステップ2:開業に必要な資金を準備する
事業方針が決まったら、開業に必要な資金を準備します。
具体的には、事務所の契約費用や内装費、パソコンなどの備品購入費、広告宣伝費といった初期投資としての開業資金と、開業後しばらく収入がなくても事業を継続するための運転資金が必要です。
特に宅地建物取引業保証協会に加入するための分担金など、まとまった費用がかかります。
自己資金だけで不足する場合は、日本政策金融公庫などからの融資を受けることも選択肢の一つです。
正確な事業計画を立て、必要な資金額を算出し、計画的に準備を進めます。
ステップ3:宅地建物取引士の資格を取得・設置する
不動産業を開業するためには、法律上、事務所に従業員5名につき1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
そのため、宅地建物取引士は必須の資格です。
代表者自身が資格を保有しているのが最も望ましい形ですが、有資格者を雇用することでも要件を満たせます。
ただし、従業員を雇用すると人件費が発生し、その従業員が退職した場合は事業が停止するリスクも伴います。
事業の安定性を考えると、独立を目指すのであれば、まず自身で資格を取得することが不可欠です。
ステップ4:事業の拠点となる事務所を確保する
宅地建物取引業の免許を申請するには、事業の拠点となる独立した事務所を確保する必要があります。
この事務所は、他の会社や住居スペースとは明確に区別された物理的な空間でなければならず、バーチャルオフィスや単なるコワーキングスペースのデスクでは原則として認められません。
自宅の一部を事務所として利用することも可能ですが、その場合も生活空間との独立性が保たれていることが条件となります。
事務所は、顧客からの信頼を得る上でも重要な要素であり、不動産会社の顔として機能するため、立地や内装も慎重に検討します。
ステップ5:法人設立または個人事業の開業手続きを行う
事務所の準備と並行して、事業形態に応じた開業手続きを進めます。
法人として事業を行う場合は、まず会社の基本ルールを定めた定款を作成し、公証役場で認証を受けた後、法務局に会社設立登記を申請します。
登記が完了すれば法人の設立は完了です。
一方、個人事業主として始める場合は、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出するだけで手続きは済みます。
社会的信用度や税金面での違いを考慮し、将来の事業規模も見据えてどちらの形態を選択するかを決定します。
ステップ6:宅地建物取引業免許を申請し保証協会に加入する
不動産業を営むには、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(複数の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣)から宅地建物取引業免許を取得しなければなりません。
免許申請には、登記されていないことの証明書や身分証明書など、多数の書類が必要です。
免許取得後、営業を開始するには営業保証金を法務局に供託する義務があります。
しかし、1,000万円という高額な保証金の代わりに、多くの事業者は弁済業務保証金分担金(主たる事務所で60万円)を納付して保証協会に加入します。
この手続きを経て、ようやく不動産業者として営業が可能になります。
ステップ7:集客の仕組みを構築し営業を開始する
開業準備が全て整ったら、いよいよ営業を開始します。
事業を継続させるためには、安定した集客の仕組みを構築することが不可欠です。
具体的な集客方法としては、自社ホームページの開設、不動産ポータルサイトへの物件掲載、SNSを活用した情報発信といったオンラインでのアプローチが主流です。
これらに加え、チラシのポスティングや看板設置などのオフライン施策も依然として有効です。
また、地域のイベントに参加して人脈を広げたり、不動産投資セミナーを開催したりするなど、能動的な営業活動を通じて顧客との接点を増やしていく努力が求められます。
不動産独立で成功するための5つの秘訣
不動産業界での独立は、多くの競合が存在するため、成功を収めるのは容易ではありません。
単に営業力があるだけでは長期的に事業を継続することは難しく、戦略的な視点と周到な準備が求められます。
ここでは、多くの成功者が実践している5つの秘訣を紹介します。
これらのポイントを理解し、開業前から意識して行動することで、独立後の成功確率を大きく高めることが可能です。
会社の看板に頼らない個人の実力や、効果的な集客戦略などが鍵となります。
会社の看板と自分の実力を切り離して考える
会社員時代に優れた営業成績を収めていたとしても、その成功が会社のブランド力や信用、豊富な情報網に支えられていた可能性を認識することが重要です。
独立すれば、その看板は一切使えなくなり、自分自身の名前と実力だけで顧客からの信頼を勝ち取らなければなりません。
過去の実績に固執せず、ゼロからスタートする覚悟が必要です。
顧客がなぜ自分を選んでくれるのかを客観的に分析し、専門知識や提案力、人間性といった個人としての付加価値を磨き続ける姿勢が、独立後の成功を左右します。
開業前に効果的な集客戦略を立てておく
集客は事業の生命線であり、開業してから準備を始めるのでは手遅れになる可能性があります。
独立準備の段階から、ターゲットとする顧客層を明確にし、その層に響く具体的な集客戦略を構築しておくべきです。
例えば、Webサイトやブログ、SNSアカウントは、開業のタイミングに合わせて本格稼働できるよう、事前に開設しコンテンツを準備しておくとスムーズです。
地域の競合他社の動向をリサーチし、自社の強みを活かした差別化戦略を練ることも欠かせません。
計画的な準備が、スタートダッシュの成功につながります。
営業以外の多様な業務に対応できる体制を整える
独立すると、顧客への営業活動だけでなく、経理、総務、契約書作成、広告出稿といったバックオフィス業務も全て自分で行う必要があります。
これらの業務に時間を取られ、本来注力すべき営業活動が疎かになってしまっては本末転倒です。
そのため、会計ソフトを導入して経理を効率化したり、必要に応じて税理士や司法書士といった外部の専門家と連携したりする体制を整えておくことが賢明です。
最近では、不動産エージェントとして活動の幅を広げ、コンサルティング業務を行うケースもあり、多角的な業務への対応力が求められます。
潤沢な運転資金を確保し資金繰りに注意する
不動産業は、成約から仲介手数料の入金までに数ヶ月かかることも珍しくなく、開業直後は収入が不安定になりがちです。
資金がショートしてしまっては、事業継続が困難になります。
そのため、少なくとも半年から1年分の事務所家賃や広告費、自身の生活費を含む運転資金を潤沢に確保しておくことが、精神的な余裕を生み、事業を安定させる上で極めて重要です。
資金繰りの状況は常に把握し、予期せぬ出費に備える必要があります。
自己資金で足りない場合は、融資の活用やフランチャイズへの加盟も選択肢となります。
業務効率化に役立つITツール導入を検討する
一人または少人数で事業を運営する場合、業務の効率化は必須課題です。
顧客情報や案件の進捗を管理するCRM(顧客関係管理)ツール、物件情報を一元管理するシステム、オンラインで契約手続きが完了する電子契約サービスなど、様々なITツールが存在します。
これらのツールを積極的に導入することで、事務作業にかかる時間を大幅に削減し、より付加価値の高い営業活動や顧客対応に時間を割くことが可能になります。
近年では副業として不動産業を始める人もいますが、そうしたケースでもITツールの活用は時間的制約を補う上で有効です。
不動産の独立に関するよくある質問
不動産業での独立を検討する際、多くの方が共通の疑問や不安を抱きます。
例えば、宅地建物取引士の資格は自分で持っていなければならないのか、業界での実務経験がない状態からでも挑戦できるのか、といった質問です。
また、どのような人が独立に成功しやすく、あるいは失敗しやすいのか、独立に適した年齢は何歳くらいなのか、といった点も気になるところでしょう。
ここでは、そうした独立に関するよくある質問に答え、具体的な判断材料を提供します。
宅建の資格は絶対に必要ですか?
不動産業を営むためには、事務所に専任の宅地建物取引士を設置することが法律で義務付けられています。
そのため、宅建資格を持つ人材の存在は必要です。
ただし、必ずしも代表者自身が資格を保有している必要はなく、有資格者を雇用することで開業条件を満たすことは可能です。
しかし、独立開業においては、その従業員が退職した場合に事業が停止してしまうリスクや、人件費の負担を考慮すると、代表者自身が資格を取得しておくことが事業の安定運営のために最も望ましい選択と言えます。
未経験からでも不動産業で独立できますか?
法律上の手続きという観点では、業界未経験からでも不動産業で独立することは可能です。
宅建業免許の取得要件に実務経験は含まれていないため、資格の設置や事務所の確保といった条件を満たせば開業できます。
しかし、現実的には、実務経験なしでの独立は極めて難しい道のりです。
不動産取引には専門知識だけでなく、集客ノウハウや顧客との交渉術、地域の情報網など、経験を通じて培われるスキルが不可欠です。
したがって、成功の確率を高めるためには、まず不動産会社で数年間の実務経験を積むことが推奨されます。
簡単ではない道を覚悟する必要があります。
不動産独立で失敗しやすい人の特徴は?
不動産独立で失敗しやすい人には、いくつかの共通点があります。
最も多いのは、会社員時代の成功体験を引きずり、「自分の営業力があれば大丈夫」と過信してしまうケースです。
会社の看板や情報網という後ろ盾がなくなった現実を直視できないと、苦戦を強いられます。
また、事業計画や資金計画が甘く、どんぶり勘定で経営してしまう人も失敗しやすい特徴です。
逆説的に、独立に向いている人は、常に市場や顧客のニーズを学び続ける謙虚さを持ち、人脈作りや情報収集を地道に行える人です。
計画性と自己管理能力も成功に不可欠な資質となります。
まとめ
不動産業での独立開業は、高収入や自由な働き方を実現できる可能性がある一方で、相応の準備と覚悟が求められます。
成功のためには、宅建資格の取得や十分な資金準備はもちろんのこと、開業前から具体的な事業計画と集客戦略を練り上げることが不可欠です。
また、会社員時代の看板に頼らず、個人の実力で顧客からの信頼を勝ち取るという強い意志も必要となります。
本記事で解説した開業までのステップや成功の秘訣、そして潜在的なリスクを十分に理解し、計画的に準備を進めることが、不動産業界で確固たる地位を築くための第一歩となります。

