意匠設計は誰でもなれない?企業に求められている“モノ“とは
建設・不動産 転職成功ノウハウ
2024.11.14
設計職の求人情報をチェックしていると、「未経験OK」というワードを頻繁に見かけます。設計は専門職のイメージが強いため、本当に経験がなくても採用してもらえるのか気になる人もいるでしょう。特に、意匠設計の場合は建築物の外観や内部のデザインをする仕事となるので、限られた人のみが対応できるイメージがあります。
では、実際に未経験でも設計職になることができるのでしょうか。本記事では、意匠設計に対して企業から求められている内容について紹介します。
企業が求めている人材や採用基準のリアルな内容を知ることで、意外と採用のハードルが高いと感じる場合もあるかもしれません。本記事で実態を知ったうえで、転職活動をよりスムーズにおこなってください。
意匠設計とは
建築設計の業種分類は以下となります。
- ・意匠設計
- ・構造設計
- ・設備設計
上記はそれぞれ担当する内容が異なりますが、意匠設計は実用的要求と美的要求を上手に取り込んで建物の形状を設計する業務となります。非常に幅広い範囲を担当することになるので、比較的高いスキルが要求される傾向にあるでしょう。
ここでは、3業種のなかの1つである意匠設計について、仕事内容と必要な経験やスキルについて解説します。
仕事内容
意匠設計がメインで担当するのは、クライアントの要望をくみ取り、建物の役割・使われ方を充分に理解したうえで建物をデザインする仕事です。外観デザインやランドスケープデザイン、人の動線を意識した室内構成や空間の演出、法基準の遵守など複雑かつ多岐にわたる要素をまとめて、設計に落とし込む必要があるでしょう。
設計するにあたり、どうしてもデザイン性を重視する傾向にあります。ただし、デザイン性を重視すると使い勝手の悪いデザインになってしまう場合があるでしょう。よって、デザイン性の良さだけでなく導線を意識した使いやすさも重視しなければなりません。また、法基準に遵守しなければならないため、法律的な知識も問われる業種です。
意匠設計には、大きく基本設計と詳細設計に分類されます。「基本設計」とは、クライアントとの間で建築物のデザインなどをヒアリングし、その内容をベースに設計することです。
一方で、「詳細設計」とは基本設計で作成した計画書や設計図書などについてクライアントが合意した場合、建築設計契約を締結した後に着手する設計のことを指します。
具体的な業務内容
意匠設計の具体的な業務内容は、以下のとおりです。
- ・クライアントとの打合せ
- ・導線の設計
- ・物性能の設定
- ・内外装などの材料選定
- ・建築基準法や消防法などの法令順守
- ・設計図書の作成
- ・申請業務
- ・現場対応など
上記のように、単純に設計業務だけを行うだけでなく、手続き関係も担当しなければなりません。また、意匠設計の中で最も重要な業務と言われているのが、クライアントとの打ち合わせです。
自社設計の建物であれば自社の意向により設計できますが、基本的にはクライアントから引き合いがあってから仕事をおこなうケースが大半です。意匠設計では、クライアントのニーズを最大限取り入れて、設計して建築物を提供しなければなりません。
クライアントは建築の知識がないケースが一般的であり、要望を上手くくみ取れないとデザインの再提案などが起こり、プロジェクトの進行にも影響します。よって、ヒアリング能力は非常に重要なスキルとなるでしょう。
ほかにも、理想の設計を実現するためには使用する材料の選定も重要な要素です。理想ばかり追いかけると、どうしても費用が高くなってしまう傾向にあります。クライアント側としては、理想の建物をより安価に実現したいと考えている場合が大半であり、それを実現するためには材料選定のスキルも重視されます。
意匠設計の場合、法令に遵守すると同時に各種申請作業も業務に含まれるケースが多いです。以上のように、意匠設計は非常に幅広い業務を担当することになります。
意匠設計の位置づけ
設計は「意匠設計」「構造設計」「設備設計」という専門に分かれており、それぞれの専門性を発揮しながらひとつの建物を完成させます。なかでも、意匠設計者は、クライアントとの打ち合わせをメインで進める存在であり、クライアントの意向を構造設計者・設備設計者に共有しながら建物の方向性を決定する設計チームのリーダー的存在として位置づけられています。
かつては、意匠設計から始めて構造設計、設備設計という一方通行の業務体制がメインでした。最近では、構造技術の発展や高度化によって複雑なデザインの建築物が増えているため、意匠設計の初期段階から構造設計が加わり意匠と構造が両立する設計を担当するケースも多いでしょう。
さらに、BIMの普及によって設備設計の担当者も、意匠設計や構造設計の段階から設計内容をチェックして対応する機会も増えています。
求められるスキル
意匠設計において、デザイン力は欠かせないスキルの1つです。ほかにも、コミュニケーション能力やバランス感覚も大切なスキルとなります。
ここでは、意匠設計に求められるスキルについて解説します。
デザイン力
意匠設計の場合、クライアントの要望にあわせて視覚的にインパクトがあるデザインや機能性の高い間取りを設計しなければなりません。直感や独自のセンスによる設計であったり、条件を整理して一つずつ課題を解決していくような設計など、意匠設計で用いる手法はさまざまです。
より優良な設計をまとめるには、高いデザイン力が求められています。
コミュニケーション能力
意匠設計をおこなううえで、コミュニケーション能力は必須です。クライアントがイメージする建物・空間を実現させるためには、要望をしっかりくみ取り理解する上で、いかに密にコミュニケーションが取れるかが問われます。
また、構造設計者や設備設計者、施工者といった、メンバーとの密な連携も必須なため、コミュニケーション能力は大切です。さらに、プロジェクトが進行する中でクライアントや現場ともしっかりと連携しながら設計をしなければならず、多方面で目配せしながらコミュニケーションを取れるかも重視されます。
バランス感覚
意匠設計を進めるためには、性能やコスト、スケジュールなど、様々な要素のメリットとデメリットを比較しながらクライアントが満足する建物を実現しなければなりません。いくら良いデザインや良い材料であったとしても、自分本位な提案内容でクライアントの要望を満たすことができなければ、良い設計者とは言えません。
費用対効果なども鑑み、バランスを取りながら最適な設計を実現できるバランス力が問われる傾向にあるでしょう。
求められる資格
意匠設計になるためには、最低限でも「建築士」の資格が必須です。建築士の資格としては、主に以下の3つがあります。
- ・一級建築士
- ・二級建築士
- ・木造建築士
上記の資格には、それぞれ扱うことができる建物の規模が決まっているため、業務で扱う建物に合わせて取得しておくと転職時は有利に働くことが一般的でしょう。一級建築士になればすべての建築物を設計できるので、大きなアピールポイントとなりますが、取得するまでのハードルはとても高いです。
最近では20代であれば二級建築士、30代半ば以降は一級建築士の資格が求められることが多いため、自分の年齢に応じて相応の建築士の資格を取得してください。
古民家に特化した意匠設計を行う場合など、ある程度ジャンルが決まっているケースでは、木造建築士の資格を取得してから徐々にステップアップする方法もおすすめです。また、インテリアコーディネーターやカラーコーディネーターといったデザイン関連の資格についても、取得しておくと有利に働くでしょう。
インテリアコーディネーターやカラーコーディネーターの資格を取得する過程で得た知識は設計だけでなく、デザインの説得力にもつながるため、保有していて損はありません。
意匠設計になるには
前述したとおり、意匠設計になるためには、最低限でも建築士の資格を取得しておいた方が良いでしょう。一方で、意匠設計において転職の条件として「未経験OK」という求人も多く見かけます。
この場合、実際にはキャリア形成の観点から、指定学科卒者の未経験者を採用したい企業がほとんどです。よって、全くの未経験で知見がない人がやってみたいという動機だけで転職できるような求人は非常に稀と言えます。
未経験の人が意匠設計を目指したい場合、CADオペレーターなどで経験を積みながら、資格取得後に転職するのがおすすめです。また、意匠設計を目指すうえで困るようなことがあれば、転職エージェントに相談をすると意匠設計になるためのキャリアプランも考えてくれるのでおすすめです。
まとめ
意匠設計へ転職するには、さまざまなスキルや能力、資格が必要とされており、ただ「やってみたい」「デザインが好き」といった理由だけで目指すのは比較的ハードルが高いのが実情です。
経験が豊富な方はもちろん、経験の浅い方や未経験の方で意匠設計への転職を考えているのであれば、転職エージェントの利用をおすすめします。日々変化する企業の採用事情を把握しているような業界に特化したエージェントであれば、求人の紹介はもとより、目指し方といったアドバイスももらえるはずです。
特に建築関連業界に強みがある転職エージェントであれば、個々人の経験や希望に合わせたキャリアプランも考えてくれるので、意匠設計を目指している方はぜひ気軽に相談してみると良いでしょう。