設備設計とは?仕事内容やメリットを解説
建設・不動産 転職豆知識
2024.11.14
設備設計は、建設業界の基礎を支える仕事です。再開発での需要増加や人手不足の影響で求人が増えているため、設備設計の仕事が気になる人も多いでしょう。今回は、設備設計の仕事内容やメリット・デメリット、平均年収、未経験者が設備設計の仕事に就くための手順を紹介します。
設備設計とは
設備設計とは、ユーザーが建物を快適に利用できるよう、電気・ガス・給排水・通信・空調・セキュリティなどの設備を設計する仕事です。設備を設置する場所は、マンション・オフィスビル・商業施設・公共施設などさまざまで、用途に応じて適切な計画・設計が必要になります。
また近年では、SDGsを意識した省エネルギー・省資源の設計や、災害に強い設備が求められており、設備設計の需要も大きくなっています。
設備設計の仕事内容
一口に「設備設計」と言っても、何の設計を行うかで仕事内容や役割は異なります。なお、設備設計の仕事を大きく分けると、強電・弱電・受変電設備を扱う「電気設備設計」と、衛生・空調・ガス・消化設備などの「機械設備設計」の2種類に集約されます。ここでは、設備設計の仕事内容をメインとなる分野別に取り上げるとともに、大まかな仕事の流れを記載します。
電気設備設計
建物の利用者が安全に電気を利用できるようにする仕事です。携わる分野としては、発電・受発電・幹線・動力といった、利用者の目に触れない部分のものに加え、照明・映像・音響など利用者が直接触れたり恩恵を受けたりするものもあります。また、セキュリティ・防犯・誘導支援など緊急時や災害の際に必要となる設備の設計も行います。
給排水衛生設備設計
建物で利用される、水やガスに関係する設備の設計を担当します。手掛けるのは、給水・給湯・排水・ガス・消火などの設備です。建物内で過ごす人たちが快適に過ごせるようにすることに加え、昨今は特に地球環境に配慮できるような設計が求められる分野と言えるでしょう。
空気調和設備設計
建物内の温度や湿度を適切に維持し、利用者が健康で快適に過ごせるよう設備を設計・整備します。担当する分野は空調や換気、排煙などの設備になります。
設備設計全般の仕事の流れ
設備設計の仕事は細分化されていますが、仕事の流れについてはある程度共通しています。主な仕事の流れは以下の通りです。
企画構想
まず行われるのが、設備の「企画構想」です。この段階では、施主や建物の利用者の要望、予算を確認する作業が行なわれます。
基本計画と基本設計
ヒアリングで提出された要望や予算を元に、「基本計画」を立てるのが次の段階です。快適性とエネルギー効率を考慮し、初期投資だけではなく運用コストも念頭に置いた計画を立てていきます。次に、建物や各スペースの用途に応じて機器の容量を設定したり、配備の検討などを行う「基本設計」に入ります。
実施設計と積算
前段階を踏まえて基本計画と基本設計を図面化するのが、「実施設計」のステップです。ここまでくると、各設備や機器、建材や資材などにかかるコストが算定できるようになり、見積書を作る「積算」が行なわれます。
確認申請
また、積算が済んだ段階で見積書が工事発注予算に反映され、法的な認可を得るために必要な「確認申請」が実施されます。そのあと、工事施工会社に設計概要を説明し、配備する設備や機器の仕様や数量などの確認に入ります。
施工管理と竣工検査
この次は「施工管理」と呼ばれる段階で、工事に着手した後に設備設計者が工程や品質、安全などの管理を行う場合もあります。工事完了後には「竣工検査」を行い、設置した設備が正しく機能するかどうかをチェックします。
この段階で不備がある場合は、原因究明とともに修正や施工のやり直しなどが実施されます。さらに運用開始後は設備の修理や更新を行い、最適な状態で使用できるよう、改修提案をすることもあります。
設備設計の平均年収
「求人ボックス給料ナビ」によると、2023年時点の設備設計の平均年収は、正社員で444万円でした。ただし、公開されてる求人の給料の幅は314万円から906万円とかなり開きがあり、勤務先の事業規模や経験年数、責任などで給料が大きく左右されると考えられます。高収入を目指すのであれば、転職時に応募する企業の規模なども考慮してみると良いでしょう。
なお、新卒で設備設計の仕事に就いた場合、他の業種と同様に数年間は給与額が抑えられるものの、資格取得やキャリアアップで20代後半に飛躍的に年収がアップするケースも多いようです。設備設計という技術的な仕事ゆえ、資格や経験が年収に直接影響しやすい傾向があるでしょう。
設備設計のメリット・デメリット
ここで、設備設計の仕事のメリットに加え、デメリットを記載します。設備設計の仕事に就くことを考えている方は参考にしてください。
設備設計のメリット
設備設計の仕事に就くメリットの一つは、生涯現役でいられるスキルを身に付けられることです。設備設計を含む建設に関係する技術は風化しにくく、また、需要の高まりもあり社会生活に欠かせないものです。そのため、設備設計の体系的な技術を身に付ければ、安定して収入が得られる可能性が高いといえます。
さらに、設備は一度導入してしまえば終わりというものではなく、老朽化によって改修の必要があるため、常に見直しがされています。特に地球環境の保護やCO2削減が叫ばれる時代においては、環境にやさしい設備の導入が積極的に行なわれています。そこで中心となるのは設備設計者です。環境に関する目標は2030年、2050年と里程標が置かれているため、これからも設備設計のニーズは高まると期待されます。
また、設備設計の仕事は、建築業界の中でも在宅勤務などの自由な働き方が可能な傾向にある職種です。企業によっては、パソコンとWi-Fiがあれば場所や時間を問わず仕事ができるケースが多いようです。また、設備設計職の需要は高止まりしているため、転職も有利である可能性が高いでしょう。
設備設計のデメリット
現場にもよりますが、設備設計の仕事は高齢化や需要増加によって人手不足の傾向があるため、複数の案件を抱えることもあるでしょう。案件が複雑な場合は、納期に間に合わせることが大変になることもあるかもしれません。
ただし、近年では多くの企業で働き方改革が進んでいるため、一人に業務が集中したり残業時間が異常に多くなるケースは少なくなりました。ライフワークバランスが気になる人は、転職時にエージェントに相談するなどして、企業の働き方改革の取り組みの情報を精査すると良いでしょう。
他には、建築物省エネ法が整備されるなど、設備設計を取り巻く法律は厳格化しており、環境や安全に対する責任も大きくなっています。例えば、設計した設備に不具合や故障が見られる場合は、スピーディーかつ確実な対応が求められるでしょう。しかし、責任感を持って仕事ができる人や、問題を解決することでモチベーションが得られる人にとっては、非常に向いている仕事といえます。
未経験から設備設計になる手順
未経験者が設備設計の仕事に携わることはできるのでしょうか。ここでは、未経験者が仕事に就くために必要な手順を挙げていきます。
未経験から設備設計者になることは可能か
結論から言うと、未経験から設備設計の仕事に就くことは決して不可能ではありません。実際、「未経験者可」としている求人も多く、入社後の教育体制を充実させている企業もあります。
未経験でも設備設計の仕事に就ける理由は、需要の高まりから建設業界全体が人手不足となっており、経験者の採用が難しい点が関係しています。さらに、ベテランの設備設計者が高齢化しているため、企業としては次の世代を育成することに力を入れ始めているのです。
未経験から設備設計者になるために
前述した通り、求人サイトなどで未経験者可としている企業の求人に応募する方法が挙げられます。また、未経験者の就職を支援した実績がある転職エージェントを利用するのも良い方法です。ただし、未経験者は経験者に比べて狭き門になることが考えられます。また、学歴で資格を取得できる期間が異なるため、学科卒と非学科卒を比べても同じことが言えます。非学科卒の場合であれば、施工管理などで現場経験を積みながら資格を取得してから転職した方が近道の場合もあります。
また、設備設計一級建築士・建築設備士などの実務経験が必要な資格取得を将来の目標としておくと、キャリアアップへの熱意を伝えられるかもしれません。面接でのアピールの仕方に不安がある人は、転職エージェントに相談すると効果的なアドバイスを得られるでしょう。
設備設計に求められる能力とは
設備設計を行うには、電気・空調・配管・機械・防火などの基本的な知識が必要です。これらの知識があると、さまざまな局面で安全性に関する正確な判断ができるでしょう。また、最新の情報を取り入れようと常にアンテナを高くしている人は、より効果が見込まれる提案を行えるようになるでしょう。
加えて、コミュニケーション能力も必要です。設計に際し、施主や工事の施工会社など、さまざまな人と関わる仕事だからです。さらに、全体を俯瞰して考えられる人は、プロジェクトの管理や施工計画の作成をスムーズに進めることができるため、設備設計に向いていると言えるでしょう。
設備設計の仕事内容やメリットについてのまとめ
設備設計の仕事内容は幅が広く、建物の利用者が快適に過ごせるような設備設計するだけではなく、運用まで携わります。技術職であるため、資格の有無や経験の長さが年収に反映されやすい傾向があります。
また、設備設計のメリットは、陳腐化しにくい一生もののスキルが身につくことです。需要の増加から未経験可の求人も出されているため、手厚い教育体制がある企業を選ぶと良いでしょう。転職活動や企業選びを迷っている人は、転職エージェントを活用して情報を集めることをおすすめします。