構造設計とは?未経験から目指す方法についても解説
建設・不動産 転職豆知識
2024.05.02
構造設計の仕事内容が具体的にイメージできない、という方も多いのではないでしょうか。構造設計は建物の見た目のデザインだけでなく、建物の倒壊や破損を防ぐような構造を設計する仕事のことです。ここでは、構造設計の仕事や年収、未経験から目指す方法について詳しく解説します。
構造設計とは
建築設計は大きく分けて、「構造設計」「意匠設計」「設備設計」という3つの分野があります。その中で構造設計は、地震や風水害などの災害での倒壊を防ぐために、意匠設計がデザインした建物の構造をデザイン・計算し構造図を作製する仕事のことを指します。建物の安全性に配慮しつつ、他の2つの分野と連携しながら建物の構造を設計していきます。
構造設計の仕事内容
構造設計の仕事内容とは、安全性の高い構造設計図を作成することです。特に耐震診断や補強設計といった、建物の安全性に関する業務全般を担当します。元々、構造設計は安全を担保した建物をつくる仕事でしたが、近年では物件規模によっては内観・外観、間取りなどをデザインする意匠設計との線引きがなくなってきている現場も増えています。
構造設計に求められるスキル
構造設計に求められるスキルは、第一に空間把握能力です。実際に建築を進めても構造に問題がないか、イメージしながら設計していく必要があります。3Dの設計データを利用することで以前より立体的にイメージしやすくなったものの、平面の設計データを見ても空間把握ができる能力があれば重宝されるでしょう。
また、構造設計には想像力も必要です。クライアントの要望をヒアリングしながら、建物の構造や安全対策をイメージできるようになれば、仕事がしやすくなるでしょう。さらに、力学的な解析能力も求められます。建物の強度や安全性を高めるためには、建物の構造に関する深い知識が必要です。建物の仕組みをしっかり理解できれば、意匠設計のデザインに合った提案ができるようになるでしょう。
取得しておくべき資格
構造設計士の仕事をするには、取得しておくべき資格や、取得していると転職時に有利になる資格が存在します。この章では、それらの資格について解説します。
一級建築士
構造設計に就職・転職する際に取得しておくべき資格としてまず挙げられるものは、建築士の資格です。建築士の資格は、一級・二級・木造の3種類に分かれています。
最もレベルの高い「一級建築士」の資格を取得しておけば、どんな規模の建物の設計にも携わることができるようになるので、キャリアアップや転職をする際にも有利になるでしょう。なお、令和4年度の一級建築士の合格率は、次の通りです。
- ・学科試験:21%
- ・設計製図試験:33%
- ・総合合格率:9.9%
一級建築士の試験は、決して簡単なものではありません。まずは二級や木造の資格にチャレンジにしてから、上位資格である一級建築士の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
構造設計一級建築士
また、一級建築士の資格を取得してから5年の構造設計の実務経験を積むと、「構造設計一級建築士」の資格取得を目指せるようになります。2005年、耐震偽装問題が起こったことで、大規模な建物を建設する場合、構造設計一級建築士が設計内容を確認することになりました。構造設計一級建築士になるまでには時間がかかるので、構造設計として働きながら資格取得を目指しましょう。
1級建築施工管理技士
他にも一級建築士を取得した後に、「1級建築施工管理技士」の資格に挑戦することもおすすめです。1級建築施工管理技士の資格を持っていると、施工内容の知識を保有していることの証明になります。一級建築士である場合は学科試験は免除され、実地試験のみで資格を取得することが可能です。
構造設計の平均年収
厚労省が公開している職業情報提供サイト「job tag(ジョブタグ)」のデータによると、構造設計の平均年収は586万円程度となっており比較的高い傾向であるとされています。ただし、企業規模や年齢、地域などによって、年収は大きく変動します。
構造設計の求人をチェックする際は、提示されている収入の額も必ずチェックすることをおすすめします。最初は平均年収よりも安い金額からスタートするかもしれませんが、大手企業に就職したり資格取得したりしてキャリアを積めば、平均年収以上の高収入を狙えるかもしれません。
転職でキャリアアップを目指す場合は、企業側と条件交渉してくれる転職エージェントを利用するのも一つの手です。聞きにくい待遇面についてもエージェントを通して企業に確認できるため、ミスマッチも起こりにくいでしょう。
構造設計のメリット・デメリット
この章では、構造設計として働く際のメリット・デメリットについて解説していきます。
メリット
構造設計として働くメリットは、幅広いジャンルの建物設計に携わることができる点です。構造設計は住宅だけでなく、オフィスやホテルなどさまざまな施設の建築に必要とされます。また、老朽化したインフラの改修や大規模な都市開発が予定されているため、構造設計の仕事は需要がなくなりにくいというメリットもあります。IT技術により世の中は急激に変化を遂げていますが、建設業の需要は簡単に無くなりません。将来性が高い仕事なので、仕事がなくなる心配は不要でしょう。
さらに、構造設計職に就くと、一級建築士や構造設計一級建築士といった上位の資格を目指す人は少なくありません。構造設計として働きながら資格を取得しておけば、転職する際に有利になる可能性も高いでしょう。
また、将来的に働き方が自由になる可能性が高い、というメリットもあります。働き方改革の一環として、建設業界では2024年4月より労働時間の上限が規制されるようになりました。短い時間で効率的に働くために、柔軟に働けるテレワークやフレックスタイムなどの制度を導入する企業も増えてきています。もちろん、現場に足を運んだりクライアントと打ち合わせを行ったりする時間も必要ですが、場合によっては自宅で働く時間も確保できるようになるはずです。
デメリット
構造設計のデメリットは、未経験から目指すのが難しいことです。必ずしも、未経験から構造設計になれないという訳ではありません。しかし、構造設計を仕事にしたいのであれば、大学や専門学校などで建築について学び、建築士を目指す必要があるでしょう。社会人の場合は、学校あるいは資格の勉強とのダブルワークになるため、人によってはハードな日々になるかもしれません。また、昔と比べると改善されていますが、企業によっては繁忙期に勉強の時間が取りにくくダブルワークは難しいというデメリットもあります。
特に、各企業の決算期に合わせて工事が集中するため、9月末や3月末が比較的忙しいとされています。また、建設現場は天候による影響を受けやすいので、遅れた工期を取り戻す必要があるでしょう。働き方改革が進んでいない一部の企業では、こうした場合に残業があったり、休日出勤になることもあります。さらに、人材不足のため1人が抱える仕事量が多くなってしまう場合もあり、1人で複数の案件を担当する可能性も考えられるでしょう。
この点については、業務効率化や働き方改革の取り組みを行っている企業に転職することで、改善される余地がある要素です。多忙で時間がない人は、転職エージェントを活用して効率よく転職活動を行うと良いでしょう。
未経験から構造設計になる手順
未経験から構造設計を目指すなら、まずは建築士になることを目指しましょう。建築系の学科で学んだ経験がない場合は、通信制大学や夜間の専門学校などに通いながら建築士を目指します。学校で学び終わったら、建設関係の職場で働きながら一級建築士などの資格取得を目指しましょう。
最初は資格を持っていなくても就職できますが、将来的に一級建築士や構造一級建築士の資格を取得すると、手当が出るなどして年収が一気に上がる可能性があります。まずは構造設計に限らず建設業界に就職して、現場を経験したうえで構造設計職に転職するのも良いかもしれません。
未経験からでも構造設計を目指せる理由
建設業界は今後の成長が見込まれており需要が高まっている一方、深刻な人手不足となっています。建設関連の仕事はたくさんあるにも関わらず、高齢化などの要因により建設業界で働く人は年々減少する傾向にあるためです。数ある職種の中でも、構造建築は人手が足りていない仕事の一つといわれています。そのため、未経験の人材も確保して、仕事をしながら人材を育てたいと考える企業も少なくないのです。
経験や資格がない場合は、資格がある人よりも低い給与からスタートする場合もありますが、未経験者でも働きながら知識を身につけることが可能です。未経験でも応募できる求人を探す際には、資格取得をサポートしてくれる制度や研修制度などがあるかチェックしておくと良いでしょう。
未経験からも構造設計者を目指せる!
建築物の安全性を確保する構造設計は、建設の現場に欠かせない職種の一つです。建設業界は人材不足ということもあり、企業によっては未経験からステップアップしながら構造設計を目指すことも可能です。さらに、構造設計として専門性を身につけて資格を取得することができれば、年収アップも期待できるでしょう。
転職の時間がとりにくい場合は、転職エージェントに相談することで効率よく求人などの情報を集められるので、利用を検討してみましょう。