意匠設計の年収は?給与アップの鍵を握る建築士資格について解説
建設・不動産 転職豆知識
2024.11.14
「意匠設計の年収ってどれぐらい?」「建築士資格はとったほうがいい?」などと、疑問に思っていませんか。今回は、都市の再開発などで需要が高まっている建築設計の業種の1つ「意匠設計」の年収について調査しました。
また、給与アップにつながる建築士資格についても解説します。「意匠設計」の年収が気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
意匠設計の年収は?
意匠設計の年収について、求人ボックス 給料ナビのデータを元に解説します。このデータによると、意匠設計の仕事の平均年収は約522万円となっています。また、国税庁の調査(令和3年分)によると、日本の平均年収が443万円であることから、意匠設計の年収は平均よりも高い傾向にあることがわかります。また、月給で換算すると43万円で、初任給は21万円程度が相場のようです。
正社員の給料分布では、448〜523万円の範囲の割合が最も多くなっています。派遣やアルバイトなど、全ての雇用形態を含めた全体の給与幅としては298〜899万円と約600万円の開きがみられることから、勤務先・経験・取得資格によって大きな差が出ていることが推測されます。
例えば、とある大手企業では、給与アップの項目として1年に1万円程度の昇給・建築士の資格手当・役職手当など、勤務年数に応じて給与が上がっていく仕組みがあります。そのような取り組みがある企業も少なくないことから、勤務年数と建築士資格の取得が給与アップの鍵を握っているようです。
資格手当の無い企業に勤めている場合は、転職エージェントを利用するなどして待遇や福利厚生のよりよい企業への転職も良いでしょう。
意匠設計の地域別給料
さらに、意匠設計の年収を地域別で比較すると、最も平均年収が高い地方は近畿地方です。大阪府が558万円と高い水準をほこる一方で、最も給与水準が低い徳島県の平均年収は462万円となっています。意匠設計の年収を地域別で見ると、最大約100万円の差が発生しており、勤務地選びが重要であることもわかります。
意匠設計とはどんな仕事?
意匠設計とは、建築設計を担う業種の1つです。建築設計は建築物を設計する上でプランを作成する職種であり、大きく「意匠設計」「構造設計」「設備設計」に分かれています。
1つの建物を作るには、クライアントからのヒアリングを元に、外観や内部のデザインおよび構造的な安全性、快適に過ごせる室内環境を設計する必要があります。「意匠設計」が建築物の外観や内部デザイン、「構造設計」が安全を考慮した土台と骨組みづくり、「設備設計」が快適かつ環境への影響にも配慮した室内環境の設計を担当するのです。
各業種について詳しく解説します。
意匠設計は建築設計の花形
「意匠設計」とは、建物の間取りや目に見える空間のデザインを設計する仕事であり、一般の人がイメージする建築士はこれにあたります。プロジェクトリーダーとして、クライアント・他職種との高いコミュニケーション能力が求められるポジションであり、建築設計の花形といえます。
また、近年では首都圏をはじめとした大規模な再開発によって需要が高まっており、その地域のランドマークとなるような建築物のデザインを手掛けることもあるでしょう。このことから、アイデアやスキルを活かして目に見える実績を残してみたい人には、非常に魅力的な職業といえます。
意匠設計の仕事内容と必要な資格
「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の仕事内容と、必要資格について表にまとめてみました。
「意匠設計」の責任者になるには、「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」のうちの、いずれかの資格を取得しなければなりません。しかし、会社内に建築士の資格を取得した人が所属していれば、他の人が無資格でも意匠設計の実務を行えます。そのため資格を取得することで、企業内での昇進・転職に有利に働くことを知っておくとよいでしょう。
特に一級建築士の資格を取得していると、資格手当がつく会社が多いため、建築士の資格は早めに取得するのがおすすめです。また、独立して事務所を作りたい場合にも、建築士の資格が必要です。
建築士資格の取得には計画性が必要
一級建築士の免許申請には、試験合格と2年以上の実務経験が必要となります。自身が「どのような建物を作りたいのか」を明確にしてから職場を選び、必要に応じた資格取得を検討するのがおすすめです。
また、建築士は非常に難易度の高い国家資格であり、働きながらの資格取得には計画性やある程度の時間が必要です。もし労働時間が長く資格勉強の時間の確保が難しい場合は、転職エージェントを利用しつつ効率よく転職することを検討しましょう。
一級建築士と二級建築士の違い
つづいて、意匠設計の年収に大きく関わる、一級建築士と二級建築士の違いについて3つの項目に分けて解説します。
- 待遇の違い
- 受験資格
- 試験内容の違い
1つずつ詳しくみていきましょう。
待遇の違い
まずは、各資格の待遇の違いについてみていきましょう。上位資格である一級建築士のほうが国家試験の難易度が高く、取得により資格手当がつくことから、年収が高いのが特徴です。
また、一級と二級では扱える建物の規模が違うことから、大規模な建築物を扱うゼネコン等では一級建築士の資格を取得していると重宝されるでしょう。
できる仕事の内容 | ・一級建築士:制限なし ・二級建築士:2階~3階建ての300㎡以内の木造物件、 100㎡以内のその他建築物 ※監理は一級建築士が優先的に行えることが多い |
平均収入 | ・一級建築士:650万円程度 ・二級建築士:480万円程度 |
資格手当 | 会社員であれば、一級建築士の資格手当は2万円前後 |
※監理について
監理には「工事監理」と「設計監理」があります。
- 工事監理:建物が図面通りにできているか設計者の目線で確認すること
- 設計監理:設計が進むかどうか、法律面などを含めて確認すること
監理業務に関しては、一級建築士をもっていると優先的に仕事を振ってもらえることが多いようです。
受験資格
各資格の受験資格については以下の表をご参照ください。
建築士の種類 | 受験資格 |
一級建築士 | ・大学・短期大学・高等専門学校等において、 指定科目を修めて卒業した者 ・二級建築士 ・建築設備士 ・その他、国土交通大臣が特に認める者 (外国大学を卒業した者等) |
二級建築士 | ・大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・専修学校・ 職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者 (実務経験最短0年) ・建築設備士 (実務経験最短0年) ・その他、国土交通大臣が特に認める者 (外国大学を卒業した者等) ・建築に関する学歴なし (実務経験7年以上) |
引用:公共財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」
公共財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」
一級建築士を目指す場合は、大学等で指定科目を修めて卒業し、試験合格と2年以上の実務経験を経るのが最短ルートになります。ただし、一級建築士の試験難易度が高いことから、先に二級建築士を取得する方が多いようです。
二級建築士は扱える建物の規模が制限されるものの、個人の住宅等の設計には特に支障がありません。どのような建築に携わりたいかによって、必要とされる資格は変わってくるでしょう。
試験内容の違い
つぎに、各資格の試験内容の違いについて解説します。建築士の国家試験は年に1回行われます。
「学科試験」と「製図試験」があり、「学科」に合格すると「製図」が受けられます。「学科試験」に合格したら、5年間のうちに3回「製図試験」にチャレンジでき、3回不合格が続くと「学科試験」から受け直しになるシビアな世界です。
試験内容の違いについて表にまとめてみました。
建築士資格 | 学科試験 | 製図試験 | 難易度 |
一級建築士 | 5科目 ・計画 ・環境整備 ・法規 ・構造 ・施工 | 集合住宅者スポーツ施設の設計 | 合格率12%前後 |
二級建築士 | 4科目 ・計画 ・法規 ・構造 ・施工 | 2階~3階建ての住宅を製図 | 合格率20%前後 |
二級建築士には1~2回の受験で合格するケースが多いようですが、一級建築士の試験難易度は二級の2倍以上高く、数回受けて合格する人がほとんどとなっています。
このように、難易度が高く扱える建築規模の大きい一級建築士を取得すれば、意匠設計者としての年収アップにつながります。また、転職にも有利に働くことから、キャリアアップを狙いたい方は計画的に取得を目指しましょう。
意匠設計の年収についてまとめ
今回は、意匠設計の年収について調査してみました。意匠設計の平均年収は、国内の平均年収より高い傾向にあります。
しかし、派遣やアルバイトなどの雇用形態を含めた全体の給与幅をみると約600万円の開きがあり、意匠設計の年収には勤務先・経験年数・資格の有無が関わることが推測されます。無資格でも意匠設計の実務を行えますが、年収アップを狙うには建築士の資格取得がおすすめです。
意匠設計者として年収を上げていきたい方は、転職エージェントを利用しつつ資格取得やより待遇の良い会社への転職を検討してみましょう。